どうなる?社会保険の適用拡大について|それぞれの条件を詳しく解説

社会保険

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以前「平成28年10月よりパート・アルバイトの社会保険の加入条件が変更されます!」という記事を書いたのですが、思いのほかよく見られています。

見られているということは素直に嬉しいことでもあります。と、同時にまだ日があるにもかかわらず気になってる人が多いんだなという印象を受けました。

また、以前の記事を公開後いつくかお問い合わせも頂きました。

なので、この「社会保険の適用拡大」について、各条件についてもう少しほり下げて書いてみようと思います。

社会保険の適用拡大とは

平成28年9月までは、『正社員の4分の3以上のなんたらかんたら』となっています。
これは、一般的に4分の3基準と呼ばれています。

これが平成28年10月からは、5つの条件・・・つまり5要件と呼ばれるものになります。
一言でいうと、社会保険に加入しなければいけない条件が緩和されたということです。

つまり、今まで加入対象でなかった人が加入しなくてはいけなくなります。
条件変更等の詳しいことは、以前書いた記事をご覧ください。

平成28年10月よりパート・アルバイトの社会保険の加入条件が変更されます!
以前の記事でご紹介した通り、一定の条件を満たした場合、社会保険に加入しなければいけません。 その一定の条件が、法律の改正により平成28年の10月から条件が変更されます。 この変更では、主にパートやアルバイトのような短時間で働...

今回の変更は、4分の3要件のような「正社員と比べてどうなの?」という基準が一切なくなりました。
つまり、働いている『あなた自身の勤務形態がどうなってるの?』、と問われることになります。
では、この5要件について、以前書ききれなったことを、1つずつ掘り下げて解説してみます。

勤務時間が週20時間以上

まずは、1つ目の『勤務時間が週20時間以上である』についてです。
これは、特段難しいことではありません。

基本的に、実勤務でどうなのかが問われるのではなく、あくまで『雇用契約書』にどう書いてあるかが重要です。

簡単に言うと、実態ではなく契約がどうなっているか、ということです。
なので、雇用契約書を探して見てみましょう。

これは、雇用保険と同じ扱いなので、今現在雇用保険に加入している人は条件をクリアしています。

月額賃金が8.8万円以上

次は、賃金の条件ですね。
月の給与が8.8万円以上あれば条件クリアとなります。

この賃金は、「週給、日給、時間給」を月額に換算したものに、各諸手当を含めたものです。

ただし、賃金に含めない除外対象のものもあります。

  • 賞与や結婚手当など臨時に支払われる賃金
  • 残業代や休日出勤や深夜勤務の割増の賃金
  • 精皆勤手当、通勤手当、家族手当などの賃金

これらは、含めずに月8.8万円以上が条件です。

さらに、よく聞く「年収106万円以上」はあくまで参考の値なので勘案しません。
なので、年収では判断されません。

逆に言うと、”年収が106万円超えちゃう!”なんて気にしても意味ないということです。

ただし、今までの扶養に入る条件の『年収130万円未満』は消えるわけではないので、これ以上だと扶養から外れます。

 

106万円以上130万円未満は?
このような疑問を持つ人も多いと思います。基本的には、あくまで平成28年10月の時点で考えます。月額8.8万円以上の見込みだと対象になるようです。

勤務期間が1年以上

続いて、勤務期間の条件ですね。
実際対象となるのは、

  • 期間の定めがなく雇用されている
  • 雇用期間が1年以上である

これらは、問答無用で対象です。
ややこしいのは、1年未満の人です。これが1年以上見込まれるかどうかが問題となります。

例えば、契約書には雇用期間が1年と記載されていても、『契約が更新される』や『更新する場合がある』等の記載があれば見込まれます。

 

では、以前から勤務している場合は?
もう前からずっと働いているよって人ですね。1年以上更新等で継続して働いている場合は、平成28年10月1日で一旦リセットされます。

そして、その後1年以上見込まれた時点(契約更新等)で対象になります。

従業員501人以上の企業

あとは、会社で社会保険に加入している人が501人以上かどうかですね。
これ、実は結構奥が深いです。

この企業というのが、働いている『勤務先単位ではない』というのが重要なポイントとなります。

簡単に言うと、子会社や事業所などは全て含まれます
例えば、スーパーやチェーン店など全国規模のお店などで働いている人は、おそらく対象になります。

詳しく言えば、「法人番号」単位でカウントします。ただ、一般の人が法人番号を知ることは難しいと思います。これは商業会社・法人の登記単位です。

例えば、「株式会社●●」という会社があります。
その会社の「△△支店」「□□支店」などは全て本店の「株式会社●●」と同じ法人番号になっていると思うので、全て足してカウントされます。

ちなみに、法人番号は公開されていますので国税庁のサイトで知ることができます。

法人番号公表サイト|国税庁

学生ではないこと

最後は、学生ではないことが条件です。
これは、ほとんどの人が違うと思いますので、説明は簡単にしておきます。

  • 卒業前に就職し、卒業後も引き続き勤務予定の人
  • 休学中の人
  • 夜間学部や夜間等の定時制の人

対象になります。それ以外の一般的な、大学生や高校生、専門学生などは対象外です。

今回の適用拡大の意図

この適用拡大は簡単に言うと、『週20~30時間未満の人』を社会保険に加入させようとしています。

今までグレーゾーンだった人たちですね。この人たちは約400万人という統計が出ています。そのうち、この適用拡大に値する人は、約25万人と言われています。

その後、3年以内に従業員501人の縛りがなくなれば、さらに約50万人が増えるようです。

私は思ったより少ないな~と感じました。まぁ、政府の計算ではこれで少しは少子高齢化の年金問題が多少解決するのでしょう。・・・たぶん。

では、気になるのが実態の声ですよね?

 

企業側の反応

大きく『労働時間の長時間化を図る』ところと『短時間化を図る』の2つに分けられると思います。

実際、企業側がこれらの人の雇用を見直すかどうかは、

  • 今後見直す(と思う) 約54%
  • 特に何もしない(と思う) 約37%

という結果が出ています。
では、どう見直すのかという統計も出ています。

社保拡大
出典:社会保険の適用拡大が短時間労働に与える影響調査

やはり、経費の負担から半数は社会保険の加入とならないように雇用の見直しがかかるのではないかと思われます。

 

労働者の声

では、逆に労働者はどう思っているのかも気になりますね。
どうしても、扶養を外れたくないと思っている人も多いのではないでしょうか。
他の人がどう思っているのかも参考になるかも知れません。

・社会保険に適用拡大された場合、働き方を変えるか?
これも上記の同調査により、

  • 変えると思う 約62%
  • 変えないと思う 約36%
  • 無回答 約2%

という結果になっています。
また、「変えると思う」といった人の具体的な内容は、

社保拡大1
出典:社会保険の適用拡大が短時間労働に与える影響調査

となっています。この辺りは、会社との折り合いが必要になりますので、実際それが出来るかどうかは分かりません。

ただ、やはり社会保険に加入したくない人の方が多いことが分かりますね。

会社が許せば社保加入はできるのか?

今回の適用拡大となるのは、あくまで前述までの5要件をすべて満たして初めて加入対象となります。

逆に、こんなことはどうなのか?という例を挙げてみます。

私の会社の職員で雇用安定のため、どうしても社会保険に加入したい人がいます。
その人は4要件は満たしているのですが、会社の社会保険の人数が500人未満なので対象にはならないのです。

つまり、対象ではないが会社が許せば社会保険に加入させることができるのか?

ここが、少し社内で検討していたのですが、結論から言うと難しいとの結果になりました。
当然、顧問の社労士の先生にも相談したのですが、「加入自体は問題ありません」とのことでした。

理由は、加入の審査に条件提示や証拠書類が要らないからです。

ただ、社会保険の監査で以下の問題が発生するということです。

  • 社会保険の加入は任意ではないので、他の同条件の人も同時に加入しなければいけない
  • もともと加入の対象ではないので、資格を喪失させられる

この2点で、加入は難しいとのことでした。

要は、例え加入したい人が他のバイトの人と勤務内容が違う(統括している、リーダー業務、管理業務)仕事をしていても、その人だけというのがネックになります。

管理業務を任せるので、本人負担を減らしたかったのですが、問題のリスクを考えれば残念な結果となりました。

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