一般的に、会社都合で退職した人は「特定受給資格者」と呼ばれます。
特定受給資格者は受給要件が緩和されり、給付日数が増えたりと一般的な退職者より手厚い感じになっています。
基本的には、倒産や解雇など退職を余儀なくされた人の場合ですが、一言に「会社都合」といっても条件はさまざまあります。
もしかしたら、あなたも実はこれらの人に該当するかも知れませんので、知っておくと得する可能性も出てきます。
ここでは、少し詳しく「特定受給資格者」と「特定理由離職者」の違いやその対象範囲などをご紹介します。
特定受給資格者の範囲
特定受給資格者は『会社側の都合により退職した人』のことです。
一般的には、「会社都合退職」の言い方の方がよく聞きますね。
では、会社都合の要件とはどのようなものなのでしょうか。
要件は大きく2つに分かれます。
- 倒産
- 解雇
によって分類されます。それぞれどのようなものか見ていきましょう。
- 会社が倒産(破産、民事再生、会社更生等の倒産手続き)した
- 会社で大幅な雇用変動により退職者(1か月で30人以上又は従業員の1/3以上)がでた
- 事業所が廃止(活動停止)した
- 事業所が移転し、通勤が困難になった
- 解雇(自分に非がない)された
- 労働契約の内容と実態が大きく違う
- 賃金の未払い(賃金の1/3を超える金額が、2ヶ月連続で支払われない)
- 賃金が85%に減少した(することとなった)
- 離職の直前6か月のうち、下記の時間を超える残業があった
→3か月連続で月45時間
→1か月で月100時間
→連続する2ヶ月以上の期間で平均して月80時間 - 職種を変更されたが、自分の職業生活を続けるために会社の配慮がない
- 労働契約の更新により、3年以上引き続き雇用されるのに、更新されなかった
- 契約期間の更新が明示されていたのに、更新されなかった
- 職場でセクハラやパワハラがあった
- 事業主から直接・間接的に退職の勧奨を受けた
- 会社の都合で3か月以上休業した
- 会社の業務が法令に違反した
これらの理由に該当すれば、「会社都合」で退職したことになります。
一言に「会社都合」といってもかなりたくさんありますね。
実際、細かい事項が含まれますので判断はハローワークに任せることになります。
特定理由離職者とは?
特定理由離職者とは、『やむを得ない事情で退職した人』のことを言います。
上記の特定受給資格者の要件に該当しない人は、会社都合ではなく自己都合の扱いになります。
なので、「正当な理由がある自己の都合で退職した」といった感じでしょうか。
実はこの特定理由離職者は、特定受給資格者と給付日数や受給資格などが同じ扱いになり手厚い保障が受けられます。
この特定理由離職者になるためには条件があります。
特定理由離職者の範囲
特定理由離職者は次のような人が該当します。要件の2つあります。
- 労働契約書に『更新する場合がある』などが明示されている
- 本人が更新を希望したが、合意されなかった
契約期間満了の理由でも、この2つに該当する場合です。
- 体力の不足、心身の障害、疾病、負傷、視力の減退、聴力の減退
- 妊娠、出産、育児等で退職し、受給期間延長の措置を受けた
- 父や母の死亡、疾病、負傷等のため、扶養介護が必要になった
- 転勤などで、家庭生活上や経済的にも家族との別居生活が困難になった
- 次の理由により、通勤不可能又は困難になった
- 結婚によって住所が変わった
- 育児に伴う保育所などの利用や親族への保育の依頼
- 通勤困難な地への移転
- 住居の強制立退き、天災等の自分の意思に反する住居の移転
- 鉄道やバスなどの交通機関の廃止や運行時間の変更等
- 事業主の命で転勤・出向による別居の回避
- 会社の人員整理等で希望退職者の募集に応じた
これらのいずれかの要件に該当すれば、特定理由離職者と認められます。
自分が該当していないか確認してみましょう。
メリット
特定受給資格者や特定理由離職者と認められれば、さまざまなメリットがあります。
1.被保険者期間は6か月でよい
失業保険の受給条件の1つでもある、雇用保険の加入期間ですが、過去1年間で6か月以上あればよいことになっています。
期間が短い分、受給できる対象になりやすいです。
※通常は過去2年間で12か月以上
2.給付制限がなくなる
一般的に自己都合の場合は給付制限(3か月間)により、失業保険の受給がかなり遅くなります。
会社都合であれば、もともと給付制限はありません。
自己都合退職でも、特定理由離職者の場合は「特定受給資格者と同様」になり、給付制限はなくなります。
実際、受給開始がかなり早まりますのでこのメリットは相当大きいです。
3.給付日数が増える(7月2日追記
これも、もともと会社都合であれば手厚い給付日数になっています。
そして、特定理由離職者の『1.労働契約の契約期間満了したが…』の場合は「特定受給資格者と同等」の給付日数になり手厚くなります。
※ただし、平成21年3月31日から平成34年3月31日までの間にある方に限ります
参考:ハローワークインターネットサービス
人にもよりますが大幅に日数が増加します。
追記)『2.』のやむを得ない自己都合の場合は、給付日数は増えませんのでご注意ください。
このように、特定受給資格者や特定理由離職者にはかなりお得なメリットがあります。
では、どのように判断されるものなのでしょうか。
離職票を確認する
退職した理由は、離職票に記載されています。なので、離職票-2の右半分を確認してみましょう。
ここに、いろいろな理由が記載されていて、チェックする欄があるはずです。そして、下の方に『具体的事情記載欄(事業所欄)』を確認してみてください
- 会社都合による解雇
- 自己都合による退職
- 期間満了による退職 など
このように、さまざまな理由が記載されていると思います。これが、あなたが退職した理由ですという会社側の言い分になります。
実際の理由はどうでしょうか。もしかしたら、「ん?違うぞ!」と思うかも知れませんね。
会社との主張が食い違っていたら?
もし、会社のいじめが原因でも実際の離職票には「自己都合」と記載されていたらどうなるのでしょうか。
しかし、会社の主張だけでは判断されませんので、安心してください。
こういった場合もありますので、ハローワークでは「会社の主張する退職理由」と「本人の主張する退職理由」を把握していきます。
ただし、それぞれの主張を確認できる資料が必要となります。例えば、契約絡みだと「労働契約書や就業規則」、賃金絡みであれば「給与明細やタイムカード」、転勤なら「会社からの通知」など該当する要件によって色々必要になります。
このように、ハローワークは双方の主張を資料等で確認した上で、慎重に判定されます。
正直に言わないと損する!
例えば、あなたが妊娠が理由で「辞めます」と言った場合は、会社側は事実を知っていても知らなくてもたいては「自己都合」と記載します。知らなかったらなおさらです。
でも実際は、ちゃんと診断書など裏付ける資料があれば特定理由離職者に該当します。
なので、特定理由離職者に該当する理由は、あまり知られていない部分もありますので、会社が「自己都合」と記載していても、まずは正確な理由を申告することが大事です。
コメント
ハローワークで、特定理由離職者の場合、給付制限(3か月間)がなくなるのはすべて共通だと言われました。ただ、「特定理由離職者の範囲」の1.は、「特定受給資格者と同等」の給付日数になり手厚くなるが、「特定理由離職者の範囲」の2.の場合は、「特定受給資格者と同等」の給付日数にならずに、増えない、と言われました。この記事を拝見して、ハローワークの担当者の方が間違っているのか、今後の申請方法によって違ってくるのかと思い、確認のため、メールしました。
コメントありがとうございます。言葉足らずで誤解を招く表現でした。
ハローワークの言う通り、2.の場合は『給付制限のみ』ですね。
確認した上、追記修正いたしました。
ご指摘ありがとうございます。
宜しくお願い致します。
看護師で施設に勤務しています、
60歳になりました、定年制はありません、
16年雇用保険は払っています、
施設からもっと介護も手伝うよういわれました、介護士が辞めて人数が減っています、
私にすれば自分が出来る範囲は手伝っているつもりでした、今年に入ってからふらつきや動悸があったので、自己都合で仕事は辞める事にしました、辞める前に病院受診しましたら、脳動脈静脈瘻の疑いと検査になりました、退職後に検査です、
特定理由離職になりますでしょうか?
コメント頂きありがとうございます。
返信が遅くなり申し訳ありません。すでに解決済かもしれませんが…
特定理由離職者になり得るかですが、私個人的には要件「2-1体力の不足、心身の障害、疾病、負傷、視力の減退、聴力の減退」にあたるのではないかと思われます。
ただ私に決定権があるわけではないのであくまで主観であることはご了承ください。
基本的にはハローワークに特定理由離職者に該当の有無に関わらず直接ありのまま申告するのがいいかと思います。